「トップ」 「お店のご案内」 「素材」 「魚足」 「紹介していただきました」 「リンク」 「土曜」
「寿司」 「おすすめの一品」 「旬の一品」 「お昼のメニュー」 「コース料理」 「地酒」 「出前」

かつて、カツオのたたきは塩辛を指した

 カツオといえば、まず思い浮かぶのがたたきでしょう。しかし、同じたたきといってもアジやイワシのたたきと違い、カツオのたたきは火であぶった刺身のことです。アジやイワシは包丁でたたいて作るため、たたきという名称はわかりやすいのですが、カツオの場合、なぜそう呼ぶのか疑問に感じる向きがあるかもしれません。

 カツオのたたきは、かつては2種類
ありました。一つはカツオの塩辛のことです。江戸時代の「日本山海名産図会」には、カツオのたたきは塩辛を指したことが記述されています。カツオの内臓を包丁でたたいて塩蔵し、発酵させた保存食をカツオのたたきと呼んでいたのです。これは全国各地で作られていたようです。

 もう一つは、
現在私達が一般に呼ぶカツオのたたきです。カツオのたたきはカツオをわらの火であぶり、塩やタレ、スダチの汁などをかけた後、味を染み込ませるために手の平で叩いて作ります。

 いずれにしろ、双方ともにカツオを叩いて作るため、カツオのたたきというわけですが、いつの間にか塩辛の方は、たたきとは呼ばなくなりました。
 ただ、カツオの本場、高知県ではそうした名残からか、今でもカツオのたたきを「焼きたたき」とか「本だたき」、塩辛(酒盗=しゅとう)のことを「塩だたき」と呼ぶこともあります。

関東で取れるカツオはたたきにする必要は無い

 カツオはサバ科の回遊魚で、冬はフィリピンの海域に生息します。春が近づくにつれて北上し、2月頃に九州南端、3月頃に四国、紀伊半島沖を通って、4月から5月にかけて関東沖にやってきます。その後、三陸沖方面にまで北上し、秋の気配を感じると、再び南方の海域に帰ります。往復の距離は実に2500km以上にもなります。

 カツオのたたきといえば、高知県が有名ですが、たたきにする理由はこの回遊経路と関係があるようです。
高知県沖に来るカツオは、まだ成長しきっておらず、脂肪の乗りが少なく、水分が多いため、そのまま食べるより、一度表面をさっと焼いた方が味が向上するのです。というのも、魚肉に含まれるたんぱく質は加熱すると、うま味の成分が出てくるからです。

 一方、関東沖にやってくるカツオはどうでしょうか。「目に青葉、山ほととぎす、初鰹」(素堂)という有名な句がありますが、ここでいう初鰹とは、関東沖に来たカツオを指しました。句に読まれるほど江戸庶民はこの時期のカツオを珍重しましたが、カツオをたたきではなく、そのまま刺身で食べるのが一般的でした。

 カツオは関東沖にやってくる頃にはイワシを大量に食べて肥え、3〜4kg位の大きさに成長します。
この時期のカツオは脂肪がほどよく乗っており、たたきにしなくても、そのままで十分美味なのです。
 ただ、江戸時代の川柳に「初鰹 銭と辛子で 二度涙」(当時はショウガやニンニクのほかに和辛子も使用していた)とあるくらい、値段がべらぼうに高かったようです。高い年にはカツオ1本が3両したという記録もあります。今の金額に換算すると
21万円程度になりますから、いかに高価なものだったかが偲ばれます。

 現在では冷凍技術の発達で、カツオは1年中食べられます。外食店やスーパーなどでは保存性を高めるためか、たたきにして売ることが多いようですが、江戸時代に習い、旬の時期ぐらいは生のカツオを刺身で食べ、たたきの味と比べてみるのはいかがでしょうか。

(食文化史研究家 永山 久夫氏 日経レストラン1995年3月1日号より抜粋)

店主より:
カツオの体表には寄生虫が付いていることがあるので、これを除去する意味もあると思われます。


「トップ」 「お店のご案内」 「素材」 「魚足」 「紹介していただきました」 「リンク」 「土曜」
「寿司」 「おすすめの一品」 「旬の一品」 「お昼のメニュー」 「コース料理」 「地酒」 「出前」